ピュアグラフトは、ご自身の身体から採取した脂肪細胞をバストに注入する豊胸手術です。脂肪吸引と組み合わせて手術を行うことになります。
脂肪の採取は気になる痩せたい部分から吸引するためスリムになりたい!と、胸を大きくしたい!の両方を叶える一石二鳥の手術になります。
日本だけでなく、アメリカやヨーロッパでも行われている豊胸手術です。コンデンスリッチ豊胸と並んで日本でもポピュラーな脂肪注入豊胸手術です。
1~2カップ程度のバストアップが可能です。
この症例は、2016年にAesthetic Surgery Journalで発表されたピュアグラフトを使用した症例です。
25歳の女性の1年後の状態です。1年後でも胸が大きいままになっています。
また、この論文ではピュアグラフトの症例を26症例集めVectraという3Dで計測する技術を用いて注入1年後の胸の体積を計測しました。その結果ピュアグラフトを使用した豊胸手術は、平均注入量が280cc(160~360cc)で定着率73.5%(72.1%~74.3%)でした。
このデータから、ピュアグラフトは注入した脂肪が100%定着しないからといって、手術が失敗したわけではないことがわかります。
また、定着率には個人差があるため、30%しか定着しなかったからといって、それが失敗にあたるかどうかは正直なんともいえません。このデータから分かることは、レンジが72.1%~74.3%と、平均前後0.8%と非常に狭い範囲になっていることです。
そのため、注入後はおおよそ70%程度は定着すると考えて大丈夫だと思います。脂肪注入の豊胸術は症例によって定着率の幅は広いと考えられてきましたが、ピュアグラフトを用いることで注入後の定着率の予測が非常にしやすくなりました。
参考文献『 Aesthetic Surgery Journal 2016,1-9 』Oxford Academic Marcos:Sforza,MD;Katarina Andjelkov,MD,PhD;
Renato Zaccheddu,MD;Rodwan Husein;and Connor Atkinson
脂肪は、一か所に集中して注入してしまうと、しこりになる恐れがあります。
そのため当院では、血液が多く通っている胸の浅い層の乳腺に少量ずつ分散して注入して失敗しないようにしています。また、注入口は傷跡が目立たない胸の下の外側の部分の片側1か所ずつから注入しています。
当院では「セリューション」や「ピュアグラフト」といった手法はおススメしておりません。
胸に脂肪を注入する際のデメリットとして、豊胸術にとって不要なものまで胸に注入してしまうことが挙げられます。
なぜなら、脂肪を吸引する際にどうしても、脂肪細胞だけでなく、麻酔液や油滴、水分、赤血球、白血球、など胸に注入するのに不必要なものまで吸引してしまうからです。
このデメリットを克服するために、ピュアグラフト豊胸術は、胸に脂肪を注入する前に、フィルターを使用してこれらの不純物を除去して、健常な脂肪細胞だけを胸に注入しています。1年後の脂肪の定着率は70%程度です。
ピュアグラフトのフィルターは2層で濾過する構造になっています。
この脂肪洗浄フィルターはFDAから認可を受けている安全性の高いフィルターになります。
また、ヨーロッパでもCEマークを取得しています。
1つ目のフィルターでは、健常な脂肪組織を残しつつ、脂肪吸引時に破壊された脂肪組織や、炎症を起こす原因になる油滴、血液、麻酔液を除去します。
2つ目のフィルターでは、排液を促します。最終的に、健常な脂肪組織だけを残します。
濾過する工程で、外気に触れない衛生面に配慮した医療機器となっています。また、だた濾過するだけなので、脂肪に負荷を与えないため、胸に注入するまで質を高く保つことが可能です。
ただ、デメリットとしては濾過して良質な脂肪細胞を抽出する方法なので、良質な脂肪細胞より細かい不純物が取り除けない点が挙げられます。
左が吸引した脂肪、そして右がピュアグラフトで濾過した後の実際に胸に注入する脂肪です。
血液や赤血球などの不純物が取り除かれているため、右の脂肪は黄色がかっています。
ただ、この左の吸引した脂肪は赤みが強いですが、これはピュアグラフトの販売会社から提供された画像で当院の症例ではないためです。
実際、当院で脂肪を吸引した場合は、組織をできるだけ傷つけないように吸引するため、赤みが少ないです。ベイザーを使用すると、より赤みが少ない脂肪を吸引することが可能です。
この画像は、吸引した脂肪から不純物を取り除いた後の脂肪の比較です。
左から二番目が重力によって、不純物を取り除いた場合、右から2番目が遠心分離器によって不純物を取り除いた場合、そして一番右がピュアグラフトにより、不純物を取り除いた脂肪です。
重力で取り除いた場合、油滴や水分、麻酔液等がまだあることがわかります。一方、遠心機やピュアグラフトで取り除いた場合、ほとんど油滴や水分、麻酔液等がほとんどないことがわかります。
色を見てもわかるように赤みが少なくきれいな色をしています。
左側が、重力により吸引した脂肪から不純物を取り除いた場合の顕微鏡の画像、右がピュアグラフトを使用しての画像です。
重力を使用しての場合、油滴や赤血球があるのがわかります。一方ピュアグラフトの場合、それらの不純物が取り除かれていることがわかります。
注入する脂肪には水分量が少ない方がいいといわれています。
遠心機を使用した場合が、一番水分量を除去することが可能ですが、それとほぼ同等にピュアグラフトでも水分量を除去することが可能です。
このグラフでは約6%から8%のレンジが記載されています。
注入する脂肪に含まれる主要な成長因子の量を遠心分離機を使用した場合とピュアグラフトを使用した場合とで比較したデータです。
ピュアグラフトでは、脂肪組織をフィルターにより洗浄するので成長因子が流れるのでは?という質問をよく受けますが、遠心分離機を使用した場合と比較してもほぼ同等であることがこのグラフからわかります。